「もう仕事を続けながら親の世話をするなんて無理かもしれない」——夜中に呼び出しの電話が鳴るたびに、そう思ったことはありませんか。介護と仕事の板挟みで疲れ果て、「いっそ辞めてしまえば楽になるのでは」と検索窓に「介護離職」と打ち込んだ経験がある方も多いと思います。私自身もキャリアコンサルタントとして、そして自分自身の親の介護を経験した一人として、その「辞めたい」という気持ちが決して甘えではないことをよく知っています。今日は、介護離職を考える前に立ち止まって知っておいてほしいことを、正直にお伝えします。
なぜ「辞める」が先に浮かんでしまうのか
介護離職を考える人の多くは、実は「辞めたい」のではなく「今のやり方のままでは続けられない」と感じているだけなのです。会社に相談しても理解されない、制度があることすら知らない、誰にも頼れる人がいない——そうした「情報不足」と「孤立感」が合わさったとき、選択肢が「仕事を辞める」の一つしか見えなくなってしまいます。
「辞める」は選択肢の一つであって、唯一の答えではありません。 これが、私が現場で何度も伝えてきたことです。介護は先が見えないからこそ、勢いで決めた選択が数年後に重くのしかかることがあります。まずは「なぜ辞めたいと感じているのか」を分解してみることが、後悔しない一歩目になります。
介護離職の実態を正しく知る
感覚だけで判断しないために、まず現実のデータを見てみましょう。厚生労働省の雇用動向調査によると、2024年に「介護・看護」を理由に離職した人は約9.3万人にのぼり、2000年の3.8万人と比べると2.4倍以上に増えています。内訳を見ると女性が約6割を占め、年齢のピークは男性が45〜49歳、女性が55〜59歳です。ちょうど働き盛り、あるいはキャリアの総仕上げの時期に、介護という現実がのしかかってくる構図が浮かび上がります。
あなたが今感じている苦しさは、統計にもはっきり表れている「多くの人が直面している壁」です。 一人だけが特別に不器用だったり、要領が悪かったりするわけでは決してありません。
もう一つ知っておいてほしいのが、2025年4月から段階的に施行されている改正育児・介護休業法です。企業には、介護に直面した従業員に対して両立支援制度を個別に周知し、意向を確認することが義務付けられました。つまり「制度があるのに教えてもらえない」という状況そのものを、法律が変えようとしている最中なのです。今の職場でこの周知を受けていないなら、それは会社側の対応が追いついていないだけかもしれません。
辞める前に確認したい3つの制度
具体的に、辞める決断をする前に必ず確認してほしい制度が3つあります。
1つ目は「介護休業」です。対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。長期の休みではなく、体制を整えるための猶予期間と考えるのが現実的です。
2つ目は「介護休暇」です。対象家族1人につき年5日(対象家族が2人以上なら年10日)、通院の付き添いや急な用事に使える短期の休みです。有給か無給かは会社によって異なるため、就業規則で確認しておく必要があります。
3つ目は、会社独自の両立支援制度です。時差出勤、時短勤務、在宅勤務など、法律で定められた最低限を超えて用意している会社も増えています。「うちの会社にはどうせ制度がない」と決めつける前に、一度人事に聞いてみることが、遠回りに見えて一番の近道です。
私が運営する介護に関するサイトも参考にしてください。
今日からできる3つの行動
制度を知るだけでは何も変わりません。今日から動ける小さな一歩を3つ挙げます。
- 地域包括支援センターに電話をかけてみる。「まだ何も決まっていないけれど話を聞きたい」という段階で相談してかまいません。介護の窓口は、崖っぷちになってから駆け込む場所ではなく、早い段階で伴走してもらう場所です。
- 会社の就業規則や人事担当者に、介護関連の制度を確認する。制度の有無だけでなく、実際に使った人がいるか、どんな手続きが必要かまで聞いておくと、いざという時に迷いません。
- 家族の間で「今の状況」と「無理していること」を言葉にして共有する。一人で抱え込んでいる介護は、家族から見えていないことが多いものです。負担を見える化するだけで、分担の話し合いが始まります。
まとめ
介護離職という言葉を検索する時点で、あなたはすでに真剣に今の状況と向き合っています。それ自体が、逃げているのではなく、ちゃんと考えている証拠です。データが示す通り、介護と仕事の両立に悩む人はこの20年で2倍以上に増えました。あなたの悩みは特別なものではなく、多くの人が同じ壁の前に立っています。
だからこそ、勢いで辞める前に、使える制度を知り、相談できる窓口とつながり、家族と現状を共有する。この3つのステップを踏むだけで、見える選択肢は確実に増えます。辞めるかどうかは、その先に落ち着いて考えればいいのです。
まず自分自身が「一人で抱え込まない」ことから始めてみてください。